2008-05-17(土) 晴一時雷雨 安静時心拍数 57 [長年日記]
_ 「俯瞰」でわかる決算書(中村 亨)
会社経営者、経営幹部あるいは管理職、ビジネスリーダーの方、経営企画室など経営判断を行う部署の方々、あるいはそうなりたいという人々向けに「決算書を使うため」に書かれたものだと「はじめに」に書いてありました。目的は決算書の重要な箇所だけにズームインして数値を読み解き、数字の裏側にあるビジネスモデルを想像したり、何かピンと来たり、疑問に感じたり、という「計数感覚」を磨くことにより、ビジネスの現場で「使える」ようになることです。
全体構成として
- パート1 PLを多読して、儲けの感覚を身につけよう
- パート2 BSを多読して、資産と負債のバランス感覚を身につけよう
- パート3 キャッシュフロー計算書を多読して、お金の流れの感覚を身につけよう
となっておりそれぞれのパートで、まず具体例を挙げて大枠を掴み、それから徐々に詳しく説明していくという形式を取っています。その具体例も本物をそのままコピーしたものではなく、重要な箇所だけを抜き出してから時系列比較あるいは他社との比較をしているため理解がしやすい工夫がなされています。さらに、最後の方で各パート、つまり、PL、BS、キャッシュフローを結びつけるポイントがまとまっていて、なるほど、そこでそう繋がっていたのかということが分かりました。
具体的な例として分かりやすかったのは、任天堂、NOVAです。こういう両極端な例をみるとものすごくいいとか倒産寸前の危険な状態というのが一目瞭然でした。他にもいろいろ具体的な企業を挙げて説明されているので実感がわきます。
気になった点は、図40aの一番下の絵ですが、
現金 120 | 借入金 120 |
利益余剰金 20 |
と書かれていましたが、これは誤りで、
現金 120 | 借入金 100 |
利益余剰金 20 |
が正しいのではないでしょうか?
あと、
抜粋式のPLを作り、大きく変化している項目に注意する
あるいは、私の友人である本田直之氏が『レバレッジ・リーディング』(東洋経済新報社)で提唱しているビジネス書の多読法にも似ています。(p.74)
これは要らないでしょう。強引過ぎだし、節を変えた行頭から「あるいは」で始まるのは文の構成として良いとは言えないでしょう。
投資家が会社四季報を読む際に重要な箇所だけをピックアップする方法としても有用なものだと思いました。